現在50代を中心とするライダーの中には、その昔片岡義男のオートバイ小説に影響を受けた方々も多いでしょう。
当時は角川文庫と角川映画の全盛期で、時代の波に乗った片岡作品は、数多く文庫化されましたが、バイク関係の代表作は、もちろん『彼のオートバイ、彼女の島』。
でもそんな中で、自分の印象に残るのは『長距離ライダーの憂鬱』
「陸送ライダーを求む。妙齢の女性にかぎる。そしてできることなら美しい人。始発地点は下関、終点は旭川。7月の第一週、あるいは第二週からスタート。報酬や保険その他、こまかなことは電話で相談」こんな配送依頼から始まるお話です。
北海道の旭川まで2週間以内で届ける旅です。車種はホンダのCB500four。主人公は各所に泊まりながら先を目指しますが、バイクで気ままに走ることの魅力が伝わる描写が幾度も登場します。
わりと軟派受けもする片岡義男の小説の中にも、まるで大藪晴彦のようにバイクのスペックを語り倒す箇所があったりして、今にしてふり返るとそれも含めて時代背景が濃く匂いますね。
---------------------------------------------